タイトル:
月影の駅 ver2
製作:
月本國 様
2008年、現代和風RPG「月影の駅」が公開。
あれから10年、月影の駅が
ver2になって帰ってきました。
旧版は私のゲーム制作に色々な意味で影響を与えた作品で、拙作「哀鬱戦記」「Regrowth」もこの作品の影響を受けています。
かつて自サイトでフリゲレビューを行っていた時に本作のレビューも掲載していましたし、バージョンアップと共にレビューを書こうと思っていました。
まー、予想以上にver2の公開が遅れてしまったのですが……。
そんな月影の駅を一言で表すとすれば、 「
人を選ぶ要素が多すぎるが、それでも
プレイする価値は高いRPG」です。
ストーリー概要
舞台は蛯原県(えびはら-)波見市(はみ-)若林。最近になって大規模な合併の末に誕生した、田舎の町が舞台。
貧乏フリーターである主人公・在塚勇人(ありつか・はやと)は、仕事でこの街に来た。
そして食事をするために立ち寄った「井上食堂」にて、ひょんなことからある仕事を引き受けることになる。
というのも、井上食堂は近くに建った郊外型の総合大型ショッピングセンター「FANCY」の開店以来、すっかり客足が途絶えてしまったのだ。
出稼ぎに出た店主とは連絡は音信不通、必死で店を守る親子。
どうやら、悪質常連客からツケを回収できれば窮地は凌げるようだ。
こうして、勇人は見知らぬ土地にて、看板娘のチカと共にツケの回収をすることになった。だが、その陰には……。
以上、旧いろいろレビューから再掲。
ver2になっても、基本的な物語は変わりません。
ver2の追加要素として、ラスボス戦勝利後に追加イベントがあります。
こちらは音信不通の店主を探す物語と、作品の舞台の10年後を描いた物語。
ストーリーは良くも悪くも
渋いオトナの物語です。
主人公の勇人は32歳、ヒロインのチカも27歳。
主要キャラで一番若い紫乃でさえ23歳と、一般的なRPGと比べるとキャラの年齢は高め。
加えて、ストーリーも渋い要素が多く、ゲームやアニメ・漫画よりは社会人ドラマに近い展開が続きます。
この点が
人を選ぶ要素その1。
本気の演出
本作はRPGツクール2000製のRPG。
解像度は320x240と低いですが、それを補うくらい魅力ある演出が特徴的。
特に鉄道関連の演出は、他に類を見ないレベルで秀逸。
冒頭の鉄橋を渡るキハ110系は、フリゲで列車が走るシーンとしては最高クラス。
ver2にでは走行音が実音加工のものになったのですが、この臨場感が素晴らしいの一言。
また、ver2になって太子公園で爺と子供が列車が走るところを見るシーンが追加されたため、いつでもキハ110系の雄姿を見ることができます。
追加イベントでは電車に乗るシーンが追加されました。
特に
店主の回想に登場する国鉄時代の気動車がホームに並ぶシーンは好き。
もちろん、鉄道以外でも演出は高品質。
美麗な一枚絵は無いですが、細やかでコミカルな演出は楽しめるかと。
一味違う「強い敵」と戦略性
冒頭で「哀鬱戦記」「Regrowth」もこの作品の影響を受けたと書きましたが、
具体的には敵の行動ルーチン(以下AI)がかなり手が込んでいます。
上図は最初の戦闘で敗北したときのメッセージですが、ある意味この言葉がしっくりくる。
他のRPGと比べて「補助技の種類が多い」「敵の行動パターンも多彩」なのが特徴。
人間系の敵が飲み物やドリンク剤で回復を行うのは序の口。
異様な姿を見せて主人公を憔悴させる蚊、マニアックな話や上司の愚痴でこちらの能力を下げてくる建設会社従業員、こちらを笑わせに来る猿……。
行動不可の状態異常を仕掛けて一方的に攻撃することも多いですが、
ここに確率で状態異常を回避したり、SP切れでループが切れたりしたところで反撃に移る流れは面白い。
戦闘の面白さという点では、かなり優秀な部類。
その代わり、作風に慣れるまでは苦戦しますが……。
HPはスキルで回復出来るため、普段よりもSP回復アイテム(特に燦々茶ボトル)は多めに用意することをお勧めします。
また、装備の種類も豊富な上に、所持金を増やす手段が少ない割に初期資金は多めなので装備の選択はかなり迷うと思います。
一概に攻撃力・防御力が高い装備が良いというわけでもなく、場合によっては装備の変更も必要かもしれません。
属性相性は気にしなくてもいいものの、状態異常耐性や敏捷性は特に注意。
ゲームバランスは難易度高めというか、慣れるまでが難しい。
ここが
人を選ぶ要素その2。
いくらストーリーが良くても、難易度が高くて先に進めなければ意味が無い。
魔窟・元ゲームショップOCEAN
人を選ぶ要素その3。
害虫がうごめくゴミ屋敷、元ゲームショップOCEAN。
ここは今作最初のダンジョンなのですが、色々な意味で一番の難関。
登場する敵がすべて害虫。
それも、蚊・ハエ・アリ・クモ・ノミ・
ゴキブリときついものが多い。
特にゴキブリは作者自宅でエンカウントしたものを撮影・加工したものなので……人を選ぶとかそういうレベルではない。
見た目だけで言えば、何もない透明な画像のノミが一番マシ。
ここに上記のゲームバランスが加わるとどうなるか。
こちらの通常攻撃は当たらない、虫は死角に止まる、かと思えば異様な姿でSPは減る、そしてすぐに逃げる。
攻撃力が低いためゲームオーバーになることはまずないと思いますが、ここで断念する方も多いと思います……。
比較的命中しやすいスキル「張り手」を使うか、殺虫剤を多めに買って躊躇せず使うかすれば勝率は上がります。
大丈夫、ボス戦にたどり着くころには通常攻撃がそれなりに命中するくらいには強くなります。
実際にプレイしないとわからない面白さ
人を選ぶ要素が多い上に難易度も高い月影の駅。
ほとんどのフリゲはプレイ動画がありますし、いっそ私も月影の駅ver2のプレイ動画を投稿しようか考えました。
(というか過去に初版のプレイ動画を投稿していた)
ですが、プレイ動画では今作の魅力は伝わらないと判断。
RPGのプレイ動画だとカットされることの多い雑魚戦にこのゲームの面白さがある、というのも理由ですが。
ストーリーの方も、メインよりもモブ住民との会話が面白いのも理由。
ゲーム進行によって会話内容が変わる人もいるし、これらを全員分確認すると動画の勢いが悪くなる。
特にダンジョン2にいる120人(!)の敵会話イベントはすべて確認するのは不可能……。
でも、勢いが悪くなる箇所に限って今作の魅力があるのも事実。
そして、これは今作のネタバレになるのですが……。
実際に体感しないとわからない面白さこそが、このゲーム最大のテーマとなります。
ネット上の情報では決して手に入らない、
自分で体験してみないとわからない魅力。
そしてゲームの世界のみならず、冒険の場を
現実世界にまで広げないとわからない面白さ。
人を選ぶ内容なのは百も承知。
だからこそ、少しでも多くの人にプレイしてもらいたい。
月影の駅とは、そういうゲームです。
私の旅も始まったばかりなので、もっと深く楽しみたいところ。
月影の駅ver2 DLは
こちら